トップページ > Crypin Story > となりからこれるのは君だけだ

Kramskoi_Christ_dans_le_désert.jpg

「自分の嗜好に従って人を評するのは容易な事だ」と、
人は言う。
然し、尺度に従って人を評する事も等しく苦もない業である。
常に生き生きとした嗜好を有し、
常に溌剌たる尺度を持つという事だけが
容易ではないのである。
-小林秀雄



さいきん、あまり
小説という、小説
本という、本を、読んではいないが
何か読もうと試みると、アンナ・カレーニナがちらつく
はっきり言って
心揺さぶるようなストーリーが控えているわけではなく
その点で言えば、戦争と平和の方がドラマに溢れているし
カラマーゾフや罪と罰、赤と黒
そういった作品たちに対しての方が、展開に好奇心を捧げられるだろうと思う
ミステリーはおもしろいし、サスペンスはおもしろい
謎、不思議、想像力を引き出してくれる展開が
歩を進めさせるのだ
では何故アンナ・カレーニナかと考えたとき
表現の機微に尽きる
一人ひとり、心の微細が、余す事無く表現され尽くされ
謎は、何処にもない
それは、ある種、もっとも現実的ではない世界で、
彼らが、彼女たちが、何故そうしているのか
一体何をもってそうしたのか
その瞬間、何を思って、
何を思ったゆえに、行動にうつり
また、何を思ったゆえに、何もしないのか
まるで心を読んだように、示されている
戦争と平和ではみられなかった何かが添えられている
だから
脚本で言えば、映画になるような小説や
巷に溢れているような、日本文学のほうが遥かにおもしろいし
たまにのぞいてみると、一日で読み進めることもある
アンナ・カレーニナは、その長さもあるが
少しずつ、一ヶ月はゆうに費やす
こっちの心が、追いつけない
そして、
そこに、ある種の頂を見つけたような気分になり
それが何よりも喜ばしい
彼と同じように、現実的に考え
あらゆる精神を、現実に即して追求し
そこには人間ならではの妥協や、弱さが含め
決して一辺倒の真実に終わらない
数多の意志が重なり合ったうえでの、となりの世界を描いた人は
他にいるのか?
そして、
何より喜ばしいのは、
人生をその探求に費やした結果
彼は、人のもつ、善の心を肯定した
それが彼のえた、確かな答えだったこと
 
 


for Trackback URL

このエントリーのトラックバックURL

Comments

コメントしちゃう?

Posted by