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死ぬとき、人間はひとりである
孤独なとき、人間は
まことの自分自身を感じる


-トルストイ

まるで何もなかったかのように
9月という月が、過ぎ去った
あまりにもはやすぎるようでいて、
そのはじまりに、一体何をしていたのか
思い起こせない


それでいま、幸せなのか?


わからないが、
先週はマザー牧場へ一泊旅行へ行った
たしかその二週間前には伊豆へと行った気がする
今回は幹事や周りに任せきりで、
ホテル探しくらいしか手伝えなかった自分がいて、
すこし、苦しさも感じたが、もうやめにしたい
考えることで、疲れたくない


その点
ただ車を走らせ、食事をして、多少騒いでいるだけの二日間は
輝いていた


はじめての6人組とは思えない、心の結束が、そこにはあった


運命?
いいえ、命を守るという
生物としての本能が招いた必然


つり橋効果なんてものじゃない
一歩先は死
しかしそれに対して何の抵抗も許されていない状況を前にして
僕らの心は、一つにならざるをえなかった
これは驚くことではない


誰でもそうなる
信長の運転を前にしたら
誰だって、そうなるんだ


彼女の前では、誰もが平等なんだ


カーナビが左と言っているのに
今左って言った?とか言いつつ
何故か、右車線に移動している


右折しながら、対向車線に入ろうとしている


小刻みに震える機体
不規則なブレーキ
揺れる後部座席


ありとあらゆる、死亡フラグがたった中で、僕らはただ祈っていた


皆、掌を重ね
頭を下げ
心の力に、すがった


静寂の中、声にもならぬ声をあげる僕たちに
見向きもせず、彼女は運転していた
その時、僕はみてしまったんだ


彼女の笑顔を・・・


笑っていたんだよ
自らがひねりだしたこの状況を前にして
命を弄びながら、彼女は笑っていた


奇跡と呼ぶことが
軽ろんじて感じられるような状況から
僕らは生還した


文字通り、奇跡的に生き残った僕は
命を留めた代わりに、
思い出を失った


一体、千葉まで行って何をしたのか?
覚えていない
かろうじて残っている写真が
現実にいたことを証明してくれているだけ
それでもいいんだ


清らかな思いで、前に進める気がするんだ


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何もかも、致し方ないことだと思うようになって、数年が経った
そうすると段々、何かに対してがむしゃらになる必要がなくなってくる
ほんの少し、前に踏み出して、駄目だったら、諦める
それで大抵のことは済むのだから楽なものだ
取り返しのつかないものを失い続けても、
たんざくの希望を一つずつ、ちぎって、落としていけばいい


それでいて何かやっている気になったりせず
謙虚に生きれば、驕ることもないと踏んでいた
誰にも迷惑はかけない、そして自分も傷つかない


しかしそんな人生はつまらなかった


別れは、いずれ訪れる
終わらせるべくもなく、終わっていくものもあれば
明確な意志をもって、終わっていくものもある
すこし回り道してもいいが、
いずれ訪れる別れから目を背けていたら台無しになってしまうんだよ


それでは思い出が、後悔によって蓋をされてしまう
がむしゃらになった思い出が、
がむしゃらになれた思いが、
緩やかな時間の流れに任せて
知らぬ間に思い出にかわっていってしまうことよりも


意志の元で、終わらせたかった


これは、つまらないプライドからくる
それはもうどうしようもない
そして致し方のない、心に空いた穴を眺めたとき


欠片の美しさを残す、唯一の方法だと思っている


かつて思い描いた
また夢みた、夕陽のような終わりは、夢になった
さよならは言えないが、感謝している


これから、前に進むだけの考えを、最初からだ


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