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好悪


わたしは古い酒を愛するように、古い快楽説を愛するものである


我我の行為を決するものは善でもなければ悪でもない
唯我我の好悪である
或は我我の快不快である


そうとしかわたしには考えられない


ではなぜ我我は極寒の天にも、将に溺れんとする幼児を見る時、進んで水に入るのであるか?

救うことを快とするからである

では水に入る不快を避け、幼児を救う快を取るのは何の尺度に依ったのであろう?

より大きい快を選んだのである

しかし肉体的快不快と精神的快不快とは同一の尺度に依らぬ筈である
いや、この二つの快不快は全然相容れぬものではない
寧ろ鹹水と淡水とのように、一つに融け合っているものである


・・・


賢人とは畢竟荊蕀の路にも、薔薇の花を咲かせるもののことである

-侏儒の言葉より


 


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完全に幸福になり得るのは白痴にのみ与えられた特権である
如何なる楽天主義者にもせよ、笑顔に終始することの出来るものではない
いや、もし真に楽天主義なるものの存在を許し得るとすれば


それは唯、如何に幸福に絶望するかと云うことのみである


-椎の葉

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民衆

シェイクスピアも、ゲエテも、李太白も、近松門左衛門も滅びるであろう
しかし芸術は民衆の中に必ず種子を残している
わたしは大正十二年に「たとい玉は砕けても、瓦は砕けない」と云うことを書いた

この確信は今日でも揺がずにいる

打ち下ろすハンマアのリズムを聞け
あのリズムの存する限り、
芸術は永遠に滅びないであろう

わたしは勿論失敗だった
が、わたしの造り出したものは必ず又誰かを作り出すであろう
一本の木の枯れることは極めて区々たる問題に過ぎない


無数の種子を宿している、大きい地面が存在する限り、芸術は永遠に滅びないであろう

 

JUNO

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いいですか

これからの人生において何か素晴らしい思い出
とりわけそれも、子供の頃に実家で創られた素晴らしい思い出以上に
かけがえのない、尊く、健康で、ためになるものは何一つないのです

君たちは教育に関していろいろ話してもらうでしょうが

少年時代から大切に抱き続けてきた
何かそのような美しき聖なる思い出こそ
恐らく最良の教育にほかならないのです


そのような思い出を生涯、数多く集めて人生を歩み続けるなら
その人は一生涯、満ち足りるでしょう
そして、たった一つしか素晴らしい思い出が心に残らなくても


いつの日かそれが私たちの救いに役立つのです。


-ドストエフスキー

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「私はどうでもいい、何もいらない」


という言葉をよくきくが、
その言葉とひとしく
無愛想な態度をみることがある


だが、すべての人々にせめて一度だけでもよいから、
他人に対して悪意を抱いているときに、
心底、誠実に「私はどうでもいい、何もいらない」
とほんの一瞬でもよいから
自分のために何一つ望まないようさせてみるがよい


簡単な内面の実験によって、
その放棄の度合いに応じて、
一切の悪意がたちまち消滅し、


それまで閉じ込められていたすべての人に対する


好意が心の底から激しく湧きおこるのを感じるはずだ


-トルストイ


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彼らが丹念につくりあげた、その小さな世界
彼らが築き上げた小さな王国は
彼ら自身の手によって、『邪悪』へと向かっていた


最初は、そうではなかった
鎮目裕史だけが、彼だけの理由によって
一人・・・『邪悪』な方向へと進んでいたのだったが


彼が踏み出す、新たなチャプターを、共に喜び
彼の選択に、敬意を表する
その為に集った20名を越す参加者は、彼の背を、いつまでも追っているのだった


彼には、それだけの人々に、自身の背を負わせるだけの力があり


参加した人々は、彼の築き上げた道を、歩んでゆけることに、誇りすら感じているのだった


自己完成という、個性のもつ、およそ究極と思われる目的を達成するため
アメリカへと渡ろうとしている
彼の心を、一体何人の人々が、論理と共に理解できていただろうか


一人くらいはいたかもしれぬ
しかしその程度の、要素にしか成り得なかった
大切なことは、他にあったのだ
 

その日、彼の傍にいることが、何よりも大切だった


そしてそれを、誰もが承知していたのだった


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彼らを、彼らたらしめる
彼らを築きあげ、今もなお形を保たせる、細胞
その城壁が、意志の介在しない所で、自ら選択し


その地に、集わせた


誰しもがそうであるように
その足は自らの為に使い、その思考も、金も、腕も、技術も
なにもかも、自らの為に、使った結果
時刻を待たずその地に集わせるという答えを導いた
ただ一つ、いつもと違ったのはそこに明確な意志がなかったということだけだった


しかし、いま
目をあわせた箕輪さんと、しんやさんの目には
明確な意思が、宿ったようにみえた


何故、いま自らがこの地にいるのか、おそらく疑問に感じていながらも
それが正しいとだけ、予感を抱いていた二人の心が、
確信へとかわった


それは、ただ眺めているだけのWorldxの目にも明らかだった

 

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