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パーフェクトワールド

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人は、本当に愛していれば、 かえって愛の言葉など白々しくて言いたくなくなるものでございます
-太宰治



そもそも彼にとっては
脱獄なんていう事件すら、
人生を彩る楽しむべき事件にしかすぎなかったのではないか
しかも彼は、いつだって前しか見ない
人生に諦めを覚えていたのか?
それは違う
いまを楽しむという、たった一つの事柄を
深く知っていただけである
彼が持っていたのは、
幾重もの傷が重なり合って、一つの芸術となったような
彼にしか輝かせることのできない、純粋な心と
父の思い出
なんて少ない、人生の積荷だろう
しかし彼は幸福だっただろう
フィリップ
何の罪もない少年と
いまを楽しみながら、
自由と、生きている事を喜びながら
アラスカへと向かう
罪の意識に悩まされることもない
彼は誰にだって、自分と同じように
目の前にある全てを楽しむ事ができるのだと、心から信じていたからだ
目の前を覆いたくなるような
哀しい現実を前にしたら、彼はその中から
またはそれ以外の全てから、笑顔で前に進む方法を探すだろう
自身があと数歩しか歩けないとわかっていても
彼は、最期まで歩みを止めないだろう
彼だけが、あと数歩、前に進めることを喜んでいる
彼は全てを許しているし、全てに感謝をしている
とても理解に苦しむような
彼の心を前にして、
彼を感じ取れた幾人かは嘆くだろう
彼の一挙一動を前にして別れる
彼を理解する者と、そうでない者
笑顔の意味を知るものと、そうでないもの


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