しかし、世の中には、それを試練として受け取ることでしか
前にすすむことかなわぬ、圧倒的中途半端な個性が、事件が、
存在するのである
彼は、オレにそれを、全身全霊をもって教えてくれている
世界遺産系男子
彼との付き合いはもう数年となるが、
この一年ほどで、我々の距離はおおきく離れてしまった
それもすべてはオレの未熟さゆえ
つまり、オレは、試練を乗り越えられなかった
おそらく、このまま我々の距離が、そのまま我々の障壁となるのに時間はかからない
その前に、オレは自らが乗り越えられなかった壁、その敗北の味を思い出したい
ことのはじまりは去年の夏だったようにおもう
彼は、これまでになく、自分を一人前の人間として扱ってくれる一人の女性に夢中だった
メイサ
それは恋と言わないまでも、母親以外に自分をいっぱしの生命と扱ってくれる数少ない女性に対する好意だった
彼ほどの圧倒的個性と、誇りを持つ男であれば、当然のことなのだが
彼は女性にみくだされることをひどくきらう
我々が彼に対して接するように、女性がしようものなら
それは彼独特の、一見理不尽にみえながらも、実際ほんとうに理不尽な
謎の怒りによって、その女性との国交は遮断してしまう
必ずだ。
例えば、ある女性が、彼について聞いた伝聞をつぶやいたら、
何故かその伝聞を伝えた張本人ではなく、伝えられた側をブロックしはじめるくらいの徹底ぶり。
彼のその徹底具合に比べたら北朝鮮の外交戦術などかわいく思えるほどだ
そんな彼が、自分を人間としてあつかってくれるメイサを前にして
西の地にいる彼女をないがしろにし、夢中になるのは、しごく当然のことだった
しかし彼はひとつの過ちをおかした
もはやオレのような世界遺産取扱検定上級者になれば、容易に想像できることなのだったのだが、
あれほど夢中になっているメイサを前にそんな過ちを犯すはずがないと、彼の度量を、完全に見誤っていた
悔やんでも悔やみきれない
それは、世界遺産が勝手に、9月に、旅行いきましょうよ、オレ企画しますよ。と
我々を大々的に誘っておきながら8月になっても9月になっても10月になっても、
一向に計画をたてる気配もなく、日々が過ぎ去り
我々はいつか彼の予定が決まってどこかでいくことになるのでは?と不安ながらも予期しつつ
一向に鳴らない電話を待ち続けていた
失礼とは感じながらおそるおそる彼にきいてみると、忘れていたと、彼は言う訳です
なるほど・・・つまり・・・我々は、試されていた・・・!
オレはそれを、試練と受け取った
彼が与えてくれた試練を、越えられなかった瞬間である。
彼はこういう、一般的感覚では有り得るはずがない事件をおこし
我々に常に、問いかけてくる
お前のその感覚は、正しいのか?と
しかし既に正しかったメイサの心にはひびかなかった
彼は、その試練によって、彼女の信頼を失ってしまう
これが意味するところは、ひとつ
彼は自分の信頼を犠牲にしてまで、オレに試練を与えてくれた
そしてオレは、その彼の思いに、敗北したのだった。
おそらくオレは、彼のこの試練に、過去50回は敗北している。
メイサに限らず、オレの友達を巻き込んで、ドタキャンや企画しないという形で
試練を与えてきてくれる彼の、ハートに、一度も報いることができていない
ただオレも黙って、彼に与えられる試練に、挑戦し続けるだけの男ではいたくないというのも事実
だからオレは、言うのだ。毎回、まいかい、何度も、なんども。
「僕だけならいいんです。でも僕の友達まで巻き込んで、適当なこと言わないでください。」
これは、オレなりの、彼の男気に対する精一杯の感謝である。
そうすると、彼は言うよ
・・・すまない、Worldx
今度こそ言ったことは守る。そう言ってくれるのである
もうそういう適当なことは言わないと、約束してくれるのである。
ところで、先月、信長様を囲む会で久しぶりに彼に会ったところ
来月、めっつさんというオレの友達を呼んで、白川郷に行くつもりであり、
よかったらWorldxもどうだい?と声をかけてくれました。
オレは、夏という一大イベントをいかに楽しみ過ごすかということに
心躍らせながら、お酒をたしなみ、つまり、浮き足立っていました
つまり彼の声に耳を傾けた。そして言ったよ。ぜひおねがいします。と
さて、本日は8月19日
いまのところ何のお話もありません。一体どうなっているのでしょうかと
ふと思い出して、オレは気づいてしまった。
また、彼の試練に、敗北してしまったことに。
夏だからと・・・浮き足立っていた・・・
もうそんな試練はない・・・そうタカを括った自分に腹が立つッ!
彼は、オレが忘れた頃を見計らって、オレのために、自らの人間的常識を崩壊させてまで
このような試練を与えてくれているというのに、またオレは鵜呑みにしてしまったのだ
悔やんでも悔やみきれないモーメント
オレはそんな厳しくも、愛情をもってオレを見守ってくれる彼を、無意識におそれていたのだろう。
実際のところ、ここ半年以上、何かあっても彼に声をかけることについては、ためらっていた。
試練を避けていたのだ。彼は、そんなオレのこの弱さを見透かしたような行為にうってでた
先月末に、オレは勇気をだして彼をさそってみた。
土曜日、よかったら一緒にあそびませんかと、みんなでお出かけしましょうよと
彼は言ったよ。私は一向に構わんと
オレは素直に喜んでしまった。世界遺産さんが遊んでくれる
世界遺産さんがきてくれる!しかし彼は前日になってこう言ってくる。
三日前にママが急アルで、その日は病院に一日付き添ってたから、明日は行けないと。
なんてこったと、オレは思った
母上がそんなたいへんなことに。
大丈夫なんですか?いまは無事なんですか?と、聞いてみると
とりあえず倒れたときに病院でみてもらって、それからは平気だと言う
ただの飲み過ぎだったと。
オレは、喉まででかかった
じゃあ何故これないんですか?という言葉を
寸前のところで押し殺して、気づいた
試練・・・
危なかった・・・
おそるべきは都博史
奇跡的に気づけた。何故ならば、この状況、はじめてではない
思い返すこと2年前
彼はよく、うちに来ては適当にフガシか何かよくわからない
謎の食料を食べ散らかして帰っていくという生活をしていた。
大抵そういうときは、数日前か一週間前くらいに、来週遊びにいってもいいですか?と
聞いてくるのである。事件がおきたのは12月
誰しもが一年でもっとも盛んな時期。オレも例外ではなかった
しかし彼は、12月の何日かをピックアップしてこういう
この日空いてるか?オレと遊ぼうぜと。
そして、年末には、毎年恒例明治神宮での初詣があり
それについていってもいいですか?と聞いてくる。
車にのるかが心配だったが、当然断る理由もなく、承諾したよ。
しかし数日後、電話が鳴る。
彼からだ。
内容は、彼の父上が倒れたという
脳溢血・・・
あまりにも重すぎる内容だった
なんとか一命を取り留めたが、代償はおおきく
下半身不随
オレは言葉を失った
彼の用件は一つ
父上が倒れたために、彼のホームタウン、千葉から出ることができないと
父上はもう車を運転することもかなわぬゆえ、オレが全てをやらなければならないのだと
彼の声から、落胆と絶望の色はみえず、使命感にもえているようだった
オレはそれが誇らしかった
つまり、彼は、こういうのだ。
予定をすべてキャンセルさせてほしいと
オレはいったよ、当たり前じゃないですか、みやこさん。と
気にせず、頑張ってくださいと、男の見せ所ですよと。
そして彼との予定が消えて空白となった一日を
どのように過ごすかと、別の友人と話していたところ
一つの不可解な情報が入る、世界遺産なら今、早稲田君の家でゲームしてるよと
オレは、そんなはずがないだろと、彼の父親がいまどうなっているのか知っているのかと
軽々しく適当なことをいうんじゃないと、訴えるぞと、声を大にして言った訳です
・・・結果的に、彼は、してました・・・ゲーム
でてました・・・千葉
・・・これはつまり、彼が、千葉から出れないという
決して乗り越えられないと思える壁を、乗り越えたことを意味します。
人間、やればできるんです
仕事やプライベートで、壁にぶちあたったとき
もう、こんなのは無理だ
できないよ、誰かたすけて
そうして目を背け、迂回しようとしたりしていませんか?
壁を乗り越えるなんて、本や映画の中だけでの世界だと
そう思っている人がいるのであれば教えます。
それは間違いです。オレは知っています。
壁は、乗り越えるためにあるんです
オレは、この目で乗り越えた人を知っている!と
世界遺産系男子のことである。
彼は千葉から出れないという壁を乗り越えただけでなく、
なんと父上の下半身不随もなおしてしまいました
どういうことかといいますと、彼は、その後に白川郷で、
謎の一人暮らしをはじめるわけですがそのとき、毎週父上が、
車を運転して彼のもとを訪れていたそうです。
完治・・・!
彼の力にかかれば、もはや若返ることすら可能
ちょっとお肌が荒れてきたな。なんていう女子の皆さん
彼にお願いしてみてはいかがですか?
余裕です
下半身不随完治までなら何でもござれです。